復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
「俺ひとりじゃ無理だけどな。みんなのおかげだ」

 彼はそう言って肩をすくめる。

 そんなふうに答えるあたり、人柄の良さが滲み出ていると思う。

「戦争はもうないと伺いました」

 西国以外の国は好戦的ではないと、カンタンから聞いていた。

 彼が自分から戦争を仕掛けたことは一度もないとも。

「ああ。西国と和睦できたからな」

 穏やかに微笑む彼からは、頼もしさこそ感じるが戦争狂などと言われる要素は微塵もない。

 帝都の人々はなにを見ているのかと言いたくなる。

「今後は魔獣を退治するくらいだな」

「あ、そうでした。まだ魔獣という敵もいましたね」

 大公領はぐるりと魔獣の山に囲まれている。

 ときどき山から下りてきて悪さをするので気が抜けない。

「奴らは天敵でもあるが、宝でもあるから大事に戦うよ」

「宝、ですか?」

 ルルは首を傾げた。

 魔獣はドラゴンが残した宝石から精霊が作り出したといわれている。

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