復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
訪問者はランベール公爵だった。
皇帝ディートリヒの母方の実家である。
公爵はいち早く戦勝祝いに駆けつけたかったと言うが、ただ祝辞を言いたいわけじゃない。アレクサンドの今後の動きが気になり、探りに来たに違いなかった。
「一週間ほど過ごして、お帰りになるそうです」
カンタンの報告に大公アレクサンドは「それはなによりだ」と答えた。
「一族の娘との縁談を持ってくるとは呆れたものです」
「本気じゃないさ、探りを入れたかっただけだろ」
アレクサンドが縁談を受け入れるとは思っていないはず。
結婚相手が決まっているのかどうか。いるとすれば、どこの令嬢か。ディートリヒにとって脅威となりうるかを知りたいだけだ。
「まったく五十人も引き連れてきやがって」
魔獣の山を越えるためとはいえ、公爵は騎士二十人と三十人の衛兵を従えてきた。
「今回のために頑丈な馬車を作らせて、怯えた目で外を覗き見ていたそうですよ。雇われ衛兵が笑っていました」