復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 カンタンが机に置いた箱には、封印がされた手紙が山ほど入っている。

 チラリと見ただけで、アレクサンドはうんざりしたように眉をひそめた。

「ほとんどが帝都での舞踏会の紹介状だと思いますが、中には縁談もあるかと」

 ギロリと睨むが、カンタンは澄まして続ける。

「戦争も終わったのですから、そろそろよろしいのではないですか?」

 アレクサンド率いる帝国軍の圧倒的勝利により、西国は完全に油田の盗掘をあきらめた。

 強引に進めていたのは王国の軍事トップだったが、度重なる敗退の責任を問われ失脚している。領地没収、公爵から男爵にまで位を下げたとの報告が入った。

 完全にあきらめたと国の本気が見てとれる判断だ。西国にいる偵察隊の報告と合わせても、あきらめたと思って間違いないだろう。

 戦争に明け暮れたアレクサンドにも、穏やかな平和が訪れたのだ。

「閣下おひとりでは、結局のところ未来は不安定なままです」

 未婚の彼に跡継ぎはいない。

 万が一のことがあれば、この地はどうなるか。

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