復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 山は魔獣がでるだけでなくルビーやサファイアの鉱脈もある。貪欲で残酷な現皇帝ディートリヒは、この地での利益を根こそぎもっていくだろう。

 ここで暮らす領地民の平和は、間違いなく奪われる。

 ランベール公爵の来訪理由は、この地の豊かさを確認するという目的もあるはず。

 戦争が終わった今、太公アレクサンドさえいなければ――。そう思っているに違いない公爵の蛇のような眼差しを思い出し、うんざりした溜め息が漏れた。

「わかってる」

 婚姻はアレクサンドだけの問題ではないのだ。

「養子でも迎えるか」

「ほぅ、心当たりがおありで?」

 すかさずカンタンに返されて「冗談だ」と苦笑を漏らす。

 貴族に養子が認められるのは血縁者と決められている。

 アレクサンドが養子を迎えられるとすれば、彼自身の血を引く子どもだ。

 相手の女性の身分は問われないが、実子かどうかは神殿で調べられ、嘘はつけない仕組みになっている。

「真面目に考えるよ」

< 61 / 202 >

この作品をシェア

pagetop