復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 消えた記憶に祭りもあるかもしれないが、目にするもの、体験するものすべてが物珍しい今のルルには、大道芸も並ぶ出店の様子も未知の世界だ。

「ルル。お祭りはどうするの?」

 先輩侍女のネージュが聞いてきた。

 二十歳半ばの彼女はルルをなにかと気にかけてくれる。

「閣下が私も連れて行ってくださるそうです」

 部屋に戻って着替えたら、閣下の部屋に行く約束だ。

「えっ、なんですって! 閣下とお祭りに行く?」

 ネージュが大きく目を見開いて、驚きのあまり洗濯物を落としそうになっている。

 おっとっとと、慌てて洗濯物を抱きかかえ「閣下とルルのふたりきりで?」と聞いてきた。

 一歩前に出て前のめりになるネージュの顔は真剣だ。

 迫力ある眼力に押されて、ルルは思わずたじろいだ。

「ご、護衛の騎士のマロさんや、ほかの騎士さんも一緒だと思いますよ?」

「それはまぁ、そうだろうけど」

 なおもネージュは納得しきれない様子である。

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