復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
「もしかすると記憶のない私に同情してくれたのかもしれないですね」

 女連れのほうが街に溶け込めるからという理由にあっさり納得したが、もしかすると気を遣わせてしまったのかもしれない。

「それはないわ」

 ネージュは断言する。

「ここには訳ありの侍女なんてたくさんいるもの。それくらいで同情していたらきりがないわ」

 訳ありでいえばネージュもそうだ。彼女は戦争孤児で、五年前この地に辿り着くまでずっと苦労続きだったと聞いた。

「閣下はお優しいから私たちみたいな者でも雇ってくれるし、分け隔てなく働いた分ちゃーんとお給金をくれるけど、それは同情ではないでしょ?」

 ネージュは、これは働きに見合う正当な評価なのだと胸を張る。

 どうやら彼女は同情という言葉が嫌いなようだ。

「だからルルを誘ったのには理由があるはずよ」

「あ、そういえば女連れのほうが自然だからと仰っていました」

 ネージュはポンと手を合わせる。

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