復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 戦争中でも、祭りは変わらずに行うよう指示していたが、今年は戦地から戻った兵士も彼らの家族もようやく心から楽しめるだろう。

「マロ、お前ももういいぞ。久しぶりに楽しんだらいい」

「いいえ、たっぷり休みを頂きましたし、閣下のお供をします」

 マロはアレクサンドのひとつ年下で、没落した伯爵家の跡取り息子だ。

 伯爵家にはすでに領地はなく、いまは帝都のタウンハウスに病床の父と母、そして妹が住んでいる。マロが彼らの家計を支えていた。

 十年前に戦地でアレクサンドと出会いそれ以来ずっとアレクサンドの側にいる。

「俺は平民に変装して、ルルと祭りを楽しむつもりだ」

 真面目で忠誠心が強いゆえ、休みを与えるのも大変だ。

 強引に言わないと一日の休みもなく働こうとする。

「では、私も平民の恰好で護衛をしましょう」

 ギロリと睨むとマロは背筋を伸ばした。

「もちろん、お邪魔はしません。人数も最低限で」

 まったく休む気はないらしい。

「わかった。好きにしろ」

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