復讐は蜜の味　～悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで～
　マロが部屋を出ると、入れ替わるようにルルが来た。

「さて、行くか」

「はい」

　ルルは普段着のごく普通の町娘の服装をしている。

　縁に小花の刺繍が入った白いブラウスに薄いピンクのペチコートと重ねた深い緑色のスカートだ。

　髪は緩く束ねて右の胸元に垂らしてある。ところどころに造花の小花を散らし、おしゃれをしたのはネージュの仕業だ。彼女はルルの部屋に来て世話を焼いて行ったのである。

　いずれにしろ侍女の制服姿ではないルルをアレクサンドが見るのは初めてだった。

「似合うじゃないか」

　思わず口にした。

　どこから見ても可愛らしい町娘である。

「ありがとうございます。閣下も不思議なほどよくお似合いですよ」

　アレクサンドも一般的な領民の格好をしている。

　茶色のシャツに黒いズボンとブーツという、街でよく見かけるありきたりな服装だ。

「髪と瞳の色を変えたんですか？」

　黒髪のはずが、アレクサンドは明るい茶色の髪色に、黒い瞳の色をしていた。

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