復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
「俺には少しだが魔力もあるからな。目立たないように存在感も魔力で弱める」

 ルルは目を丸くする。

「魔力まであるんですね! 閣下は本当にすごいです」

 あははと思わず照れ笑いを浮かべた。



 城から裏路地まで、目立たないよう馬車で移動した。

「呼び名を変えなきゃな。ルルはいいとして閣下はまずいだろ。アレックスでいい。敬語もなしだぞ」

「えっ、で、でも、そんな」

「さあ、言ってみろ」

 催促されて、ルルはもじもじしながら観念したらしい。

「では、アレックス、よろしくお願いします」

 ぺこりと頭を下げる。

「敬語じゃないか」と笑ったが、ルルは「せめてそれくらいの敬語は許してください」と頬を膨らませた。

「平民だって敬語は使いますよ?」

「しかたない。譲歩しよう」

 クスクス笑うルルがあまりにかわいらしく思えた。

 ルルは美人だ。髪型や服装のせいか、こんなにかわいいのかと感心してしまう。

 長く戦地にいて、こういう状況に慣れていないためなのか。

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