復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 ルルの刺繍を手に入れ、ゴーティエ公爵家に行けば確証をえられるかもしれない。

「刺繍ですか?」

 アレクサンドはうなずく。

「はい。ではハンカチでいいでしょうか。どんな刺繍にしましょう?」

「薄紫色の薔薇の花を、そのカバンの花のように」

 ルイーズのハンカチは淡い紫の薔薇が刺繍されていた。大きな薔薇が三つ。その両脇につぼみの薔薇がいくつか。

 配置はちょうど、ルルのカバンの刺繍の構図のように。

「薔薇、ですか? 薄紫の?」

 怪訝そうなルルに、ふと気づく。

 どう考えてもアレクサンドが持つハンカチのイメージじゃない。

「あ、いや。俺が使うんじゃなくてだな。えっと、世話になった女性へのプレゼントにしたいんだ」

「そうなんですね」

 ルルはホッとしたようにクスッと笑う。

「てっきり閣下がお使いになるのかと思って」

「俺用ならドラゴンだろ」

 あははと笑い合う。

「じゃあ、閣下用にはドラゴンの刺繍をしますね」

「あ、また閣下に戻ってるぞ」

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