復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
「よ、余計な話でした! し、失礼します!」

 あたふたしながら、マロは部屋を出ていった。

「ったく。油断も隙もない」

 思わず眉間に皺が寄る。

 まさかそんなにたくさんの男達が、ルルを狙っていたとは。

「――恋人同士か」

 言われてみれば、そんな気分になっていたかもしれない。

 はぁ、と溜め息が漏れた。

 ルイーズかもしれないと思ったのがきっかけだ。

 助けられなかった罪悪感を、彼女が実はルイーズだと信じることで消そうとしていた。

 でも、ルルはルルだ。

 ルイーズではない可能性が強くなった今でも、ルルを守りたい気持ちに変わりはない。

 ピエールが不在だった一週間。執務室で、書類を読み上げるルルの声に耳を傾けた。

 心地よい響き、ホッとする笑顔。自分は素性が知れない者だと、一線を引く控え目さも。すべてが、今は愛おしい。

 手を繋きたかった。

 ルルが人混みに消えてしまうのが怖くて。

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