復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
(困ったなぁ)
ルルは溜め息をつく。
ふと気づくと大公のことを考えてしまうのだ。
祭りに行く前までは、こんな気持ちにはならなかった。
手を繋いだせいか。
それとも並んで同じものをみて。一緒に笑い、迷子を助けてほっこりとしたうちのどれか?
あるいは部屋に帰ってきて、ぼっと一息ついたときの、溢れる幸せな気持ちに気づいたせいなのか。
大公の笑顔が脳裏から離れない。
「ルルー。夕べぜんぜん会わなかったね。どこにいたの?」
ポンと肩を叩き、声をかけてきたのは、昨日報告するように先輩侍女のネージュだ。
「広場で出店を覗いたり」
立ち寄った店をあげた。
「えー、広場にいたのに。ルルは人混みにのまれても、閣下は背が高いから絶対わかるはずのにー」
残念がるネージュに、魔法で存在感を消したとは言わなかった。秘密かもしれないし。
「閣下は髪色とか変えて変装していたから、わからなかったのかもしれないですね」