大好きな君と大嫌いな君
家族でさえ、嫌だと思ってしまう時がある。
ずっと、一緒にいるから嫌なところが目について、離れないで、というより自ら嫌なところを離さないようにして、そこばかりを見るようになって、川の底の濁ったところを直視(ちょくし)するみたいにして、そんな感じでダメなところを気にしてしまう。
私が一番ダメダメなのに。
部屋でゴロゴロしていると、猫が入ってきた。
あくびをしている。
この猫の名前は、レッドだ。なんだか、光の加減で赤く見えるので、そんな名前になった。
確か、私がつけた名前だったと思う。子供の頃なので詳しくは覚えていない。
「レッド」
静かに、呼びかけた。
……無視された。
「レッドちゃん?」
……やっぱり、無視される。最近はいつもこうだ。
私の部屋に入ってきて、私の呼びかけを無視するとはいい度胸をしている。でも可愛いから許す。
「いい子……じゃないか。無視するもんね。……じゃあ、悪い子だねー」
レッドの頭を撫でながら、そんな風に呟く。レッドは「シャー」とうざそうに鳴くと、部屋からいなくなった。
私、悪いことした? ただただ、可愛がったのに。頭を撫でられるのが嫌だったのだろうか?
いや、違うな。私に撫でられるのが嫌だったんだ。きっと。そこまで嫌われるようなことをした覚えはない。
でも、私にはレッドの気持ちがわかった。ずっと一緒にいたり、あまりにも好きすぎる時って、なんだか嫌な感情を抱いてしまうことが多くなるんだ。
例えば、誰かとずっと一緒にいた場合は、その人に持っていた素敵な感情が、時間と共に薄れていく。悲しいことだけ薄れていけばいいのに、美しい感情もなくなってしまう。
好きすぎる場合は、幻想を強く持ってしまう場合がある。幻想はふとした時に剥がれてしまい、些細なことで粉砕する。粉々になったものはゴミになるのと同じで、それからその人に持つ感情はそれに近いものになる。
勝手に好きになって、勝手に嫌いになる。全て心の中で何かを選別するみたいに行われる。
「はあ……」
ため息をついた。
頭の中にずっと浮かんでいることがある。それは、ある男の子のことだった。