大好きな君と大嫌いな君

ずっと、ある男の子が頭の中から離れなかった。

強くはないけど、優しくて暖かい子。背が高くて色白な子。

最初は、なんとなく目で追っているだけだった。別に好きという感情はその時点ではなかった。本当のことだ。つまり、一目惚れではなかった。

ただ、ぼーっと何かを見る時に、その男の子のことを見ることが多くなった。

そんな風に見つめている回数が増えた時——唯《ゆい》からこんなことを言われた。

「なんか、最近気になることがあるんだけど……」

唯は私の目を見ながら言った。唯は私の友達だ。

「何?」

私は冷たい口調で言った。どうして、冷たい口調だったのかは忘れてしまった。体調が悪かったのか、もしくは機嫌が悪かったのか。どちらにしても、唯に対して嫌な気持ちを抱いていたわけではない。

「瞳、ずっと、悠里のことを見つめてない?」

瞳は私の名前だ。

「……そ、そんなことないよ。それに、瞳で見つめないと、どうやって見つめたらいいの?」

「そういう変な冗談はいらない。……私、すごく気になるんだけど」

「何が気になるの?」

「いや、悠里のこと好きなのかなって」

「好きじゃないよ!」

「好きじゃないのに、見つめているっておかしくない?」

「だから、そもそも見つめていないんだって!」

「そんなことないよ。私が瞳のことをどれだけ気にかけているのかわからないの? 瞳は、何かあるとすぐに悠里の方を見ているよ。正直、嫉妬しちゃうな」

「どうしてよ?」

「だって、私の方を見る回数より、悠里を見る回数の方が多い気がしてさ」

「友達のことをジロジロ見たりしないよ」

「へぇー。友達のことは見ないのに、あまり話したことない悠里のことは見るんだ」

この時、唯はちょっと怒ったような表情だった気がする。

「だから、悠里のことは見ていないって! ほら、悠里は前の方の席でしょ? んで、私は後ろの方の席!」

「……それが、どうかしたの?」

「だからね、黒板を見ていると悠里が目に入ってくるわけ!」

「なるほどね。……黒板を見るついでに悠里を見ているってことか」

「違うって!」

私は首を横に振った。





< 2 / 4 >

この作品をシェア

pagetop