溺愛社長の2度目の恋
ハイテンションに話をする檜垣さんに笑顔で相づちを打ちながら、私はまったく別のことを考えていた。

……有史さん、今頃あの家で、ひとりでごはん食べてるんだよね。

外食の可能性もあるが、深里さんと極力一緒に食べたいからなるべく家で食べると言っていた。
私がいなくてひさしぶりのひとりの食事を、彼はどんな思いで食べているのだろう。
少しくらい、淋しいとか思ってくれたらいいな。

「……ちゃん。
夏音ちゃん」

「……え?」

檜垣さんから名を呼ばれ、意識が目の前に戻ってくる。

「ぼーっとしちゃって、どうした?
もしかして疲れたのか?」

「あー、すみません。
これ、美味しいけど、どうやって作ってるのかなって考えていました」

曖昧に笑ってその場を取り繕う。
今、私が一緒にいるのは檜垣さんだ。
なのに、別の人を考えるなんて失礼に決まっている。
今日は有史さんを忘れよう。

食後、誘われてバーへ行く。
たわいのない話をしながら、お酒を飲んだ。
檜垣さんはウィスキー、私は甘めのカクテルだ。

「夏音ちゃんは、さ。
俺のこと、どう思う?」

聞きにくそうに檜垣さんが尋ねてくる。

「そうですね……。
強引で、押しが強くて……」

「それっていいとないじゃん」

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