溺愛社長の2度目の恋
しかし、結婚となるとそう簡単に返事ができるわけもない。

「偽装とはいえ社長夫人だ、それなりの生活は約束する。
生活の一切は僕がみるし、それ以外に手当……というと言い方が悪けれど、それなりのお金を渡すよ」

これは偽装結婚なんて無茶を提案する、彼なりの償いなんだろうか。
けれど問題はお金ではないので、首は縦に振れなかった。

「お話はわかりました。
もし、天倉社長との結婚を拒否したら、どうなるんですか……?」

それが一番の懸念材料だった。
拒否したら採用はなし、とかはないと思いたい。

「もちろん、この話はなかったことに」

重々しく社長が頷き、待望の採用がダメになりそうなのにも、天倉社長の人柄にも失望した。

「……なーんて嘘だよ。
みすみす有望な人材を逃すなんて、バカだからね」

「はぁ……」

落ち込んでいる私がおかしかったのか彼がふふっと小さく笑い、なんか気が抜ける。

「仕事は月曜日からでいいかな」

「はい、問題ありません」

「じゃあ、月曜日からお願いするよ。
結婚の返事はそのときに」

「……わかりました」

差し出された彼の手を、微妙な笑顔で握り返した。



「あー、疲れた!」

家に帰り、着替えもせずにベッドに倒れ込む。

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