溺愛社長の2度目の恋
浴室の鏡に映る私の身体には、あちこち赤い跡がついていた。

「……つけすぎ」

とか言いつつ、顔がにやつく。
檜垣さんにつけられたときは、不埒なものでしかなかったのに。

「おはよう、夏音」

「おはようございます」

キッチンへ行くとちょうど、有史さんが料理をよそっているところだった。

「じゃあ、食べようか」

ダイニングテーブルにそれを運び、今日はそのまま椅子に座る。

「あの……」

深里さんのところへ料理を運ばないでいいんだろうか。

「ん?
ああ」

私が不思議そうな顔をしていたから、彼はいいんだと頷いた。

「これからは夏音とふたりで幸せになるって決めたからね」

有史さんは本当に、深里さんを忘れるって決めたんだ。
それは、嬉しいけれど。

「無理はしなくていいですからね」

「ありがとう、夏音。
でも、無理なんてしてないよ」

笑った有史さんは、清々しい顔をしていた。

向かいあって朝食を食べる。

「できたてって、いつもより美味しいね」

有史さんはほわんと気の抜ける顔で笑う。
それに胸の中がほわっと温かくなった。
彼は今までいつも、深里さんに料理を運んだあと、少し冷めた料理を食べていた。
それがこれからはできたてを食べられるのだ。

「そうですね」

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