溺愛社長の2度目の恋
そこに立つ有史さんは、私が知っている彼とは違った。
いつもは緩くセットしてある髪が、きっちりオールバックになっているから?
それとも、眼鏡が銀縁スクエアに変わっているから?
……うん、きっとそれに違いない。

有史さんの隣には私とはタイプの違う、可愛らしいお嬢さんが立っている。
あれが、有史さんの婚約者という人なんだろう。

有史さんから目を離さず、挨拶などを聞いていた。
たった数日会わなかっただけなのに、ずいぶんひさしぶりな気がする。

「有史さん!」

談笑になり、人並みを縫って有史さんに駆け寄った。
きっと笑って、いつものように私の名を、「夏音」ってあの優しい声で呼んでくれるはず。
そう、期待したのに。

「どなたですか?」

彼は笑っていたがそれは作りものめいていて、私を拒絶していた。

「あ、あの。
な、なつ……」

足下がぐらぐらして、立っているのがやっとだ。
じわじわと浮いてくる涙に耐える。
眼鏡の向こうからガラス玉のような目に見つめられ、なにも言えなくなった。

「もうよろしいですか」

「……はい」

一方的に話を切り上げられ、俯いた。

「大丈夫か」

「……帰る」

俯いたまま檜垣さんの袖を力なく引っ張る。

「わかった」

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