溺愛社長の2度目の恋
第10.5話 そのときは存分に僕を罵っておくれ
「どなたですか?」
僕が言った途端に、夏音がみるみる顔色を失っていく。
「あ、あの。
な、なつ……」
その大きな目に溜まる涙を落とすまいと健気に堪えているのがわかった。
必死に言葉を紡ぐ唇は細かく震えている。
――僕は夏音を、傷つけている。
痛む胸を無視して、さらに彼女を傷つける言葉を投げかけた。
「もうよろしいですか」
「……はい」
彼女に背を向け、見えないようにぐっと手を強く握り込む。
……本当は。
今すぐ「ごめんね、嘘だよ」と夏音を抱き締めたい。
でも、今後のためにもそれはできなかった。
すっかり落ち込んで去っていく夏音を目で追う。
彼女の傍には檜垣がついていた。
彼がこちらへ意味深な視線を送り、カッと腹の底に火がついた。
思わず踏み出しかけた足を、かろうじて留める。
「あれが、有史さんの奥さん?」
「そう」
寄ってきた今現在の婚約者が、ちらりと夏音をうかがう。
「可哀想にね、有史さんに会えてあんなに嬉しそうだったのに」
彼女は夏音をバカにしているようで、むっとした。
「バリキャリの見た目と違い、中身は純情とか好みだわ。
私に恋人がいなければ惚れていたかもしれないけど」
楽しそうに彼女は笑っていて、思わずため息が出る。
僕が言った途端に、夏音がみるみる顔色を失っていく。
「あ、あの。
な、なつ……」
その大きな目に溜まる涙を落とすまいと健気に堪えているのがわかった。
必死に言葉を紡ぐ唇は細かく震えている。
――僕は夏音を、傷つけている。
痛む胸を無視して、さらに彼女を傷つける言葉を投げかけた。
「もうよろしいですか」
「……はい」
彼女に背を向け、見えないようにぐっと手を強く握り込む。
……本当は。
今すぐ「ごめんね、嘘だよ」と夏音を抱き締めたい。
でも、今後のためにもそれはできなかった。
すっかり落ち込んで去っていく夏音を目で追う。
彼女の傍には檜垣がついていた。
彼がこちらへ意味深な視線を送り、カッと腹の底に火がついた。
思わず踏み出しかけた足を、かろうじて留める。
「あれが、有史さんの奥さん?」
「そう」
寄ってきた今現在の婚約者が、ちらりと夏音をうかがう。
「可哀想にね、有史さんに会えてあんなに嬉しそうだったのに」
彼女は夏音をバカにしているようで、むっとした。
「バリキャリの見た目と違い、中身は純情とか好みだわ。
私に恋人がいなければ惚れていたかもしれないけど」
楽しそうに彼女は笑っていて、思わずため息が出る。