溺愛社長の2度目の恋
最終話 私の幸せは私が決める
有史さんが急にいなくなったので、会社はとにかく忙しかった。

「夏音さん。
この件、どうします?」

「私が引き受けるよ。
あとは大丈夫?」

「あー、あるっちゃあるんですけど、そんなに引き受けて大丈夫っすか?」

心配そうに磯田くんが眉を寄せる。

「これくらい全然平気だよ。
元ブラック勤務、舐めんな」

それに、おどけるように笑って答えた。

「無理はせんでくださいね。
夏音さんが倒れたら天倉社長が……スンマセン」

私に睨まれ、彼がすまなそうに肩を寄せる。

「全然大丈夫だから、どんどん仕事持ってきていいよ」

「あー、はい……」

最終的に磯田くんは、微妙な笑顔で去っていった。
有史さんがやっていた仕事が宙に浮き、代わりに誰かがやらなければならない状況になっていた。
それを全部、私が引き受ける必要はないのはわかっていたが、今は忙しくして有史さんを忘れていたかった。

「ひっさしぶりー!
……って、三日しか経ってないか」

バタバタやっていたら、檜垣さんが顔を出した。
彼とはあのパーティのあとから会っていない。
この会社の社長になったとはいえ、掛け持ちなので常駐ではないのだ。

「こんにちは、檜垣さん!」

挨拶だけしてパソコンと向き直る。

「夏音ちゃん、昼メシ行こうぜ」

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