溺愛社長の2度目の恋
「もう少しかかるから待ってろ。
古海は……」

「夏音ちゃんの仕事はもうしゅーりょー。
俺と仲良く待ってような」

私の前に顔を出し、檜垣さんはにかっと笑った。
それにはもう、逆らえない。

「はーい」

おとなしくキリのいいところでパソコンを落とした。

休憩コーナーでコーヒーを飲みながら末石専務の仕事が終わるのを待つ。

「安心した、前より顔色がよくなってる」

檜垣さんは改めて私の顔を見て、嬉しそうに笑った。

「檜垣さんのおかげです」

あのあと、彼が医師を紹介してくれ、軽い安定剤を処方してもらっている。
おかげで、ぐっすりとはいかないが疲れが取れる程度には眠れているし、普通よりは少し少ないくらいだが食べられるようになっていた。
それに、できるだけ元気でいなければと思ったのもある。

「夏音ちゃんはそうやって、笑ってるほうがいいよ」

私の頬をするりと撫で、檜垣さんの手が離れていく。
それを、なんの感情もなく見ていた。
やはり、私は彼になにをされてもドキドキしないらしい。

「待たせた」

少しして、片付けを済ませて末石専務が来た。
今日はもう全員帰ったのか、電気が消えている。

「肉食いに行くぞ、肉」

「お前はほんと、肉が好きだな」

笑いながら末木専務が鍵をかける。

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