溺愛社長の2度目の恋
「肉が好きなのになんで、焼き肉屋の経営をしてないんだろうな?」

「知るか」

ふたりの掛け合いがおかしくて、笑ってしまう。
――でも。
ここに、有史さんがいたら。
つい、そう考えて淋しくなった。

檜垣さんのリクエストで、焼き肉だった。
案内された個室で、檜垣さんは高い肉をバンバン頼んでいる。

「お疲れー」

ふたりはビールだったが、私は遠慮させてもらった。
今飲んだら、悪酔いしそうだ。

「とりあえず、食おう。
俺、腹が減ってるんだ」

届いた肉を檜垣さんはどんどん焼き、私のお皿に入れてくる。

「ほら食え、どんどん食え」

「俺は?」

「末石さんは自分でできるだろ」

「なんか俺の扱いが酷いな」

笑いながら末石専務は自分でお肉を焼いていた。

「んで、これからの話だけどさ」

ある程度お腹が満たされ、ようやく檜垣さんが本題に入る。

「これまで俺が会社を乗っ取ったりして、天倉さんの反応を見てきたわけだけど」

檜垣さんが我が社の社長になったのって、有史さんの反応を見るためだったんだ。
ただ単に、面白がっているのかと思っていた。

「びっくりするくらい、なーんもない。
なに、あの人、スカイエンドにも夏音ちゃんにも、なーんの未練もないってわけ?」

< 172 / 184 >

この作品をシェア

pagetop