溺愛社長の2度目の恋
「来てる」

控え室に戻ってきた檜垣さんが私に頷く。
招待状を出しても、有史さんに来てもらえないんじゃないかと不安だった。
これで、第一関門クリアだ。

「今日の段取りは覚えてるな?」

確認され、うんと頷く。
招待客の前で檜垣さんからプロポーズされ、差し出される指環を受け取る。
それだけだ。
わざわざ指環を用意するのは申し訳ないと思ったが、前回返されたのかあるからと彼は笑っていて、さらに申し訳なくなった。

「大丈夫でしょうか……」

きっと有史さんが止めに入ってくれると信じているが、そうじゃなかったら?
想像して昨晩は、安定剤を飲んでも眠れなかった。

「そんなに心配しなくったって、大丈夫だって。
天倉さんを信じろよ」

「あいたっ!」

思いっきり背中を叩かれ、つい彼を睨んでいた。

「落ち込んでるより、少し怒ってるくらいのほうがいい」

謝るように檜垣さんが軽く肩をぽんぽんと叩く。
彼の言うとおりだ、私は有史さんを信じて、真っ直ぐ立たなければ。

「それにな」

一度、言葉を切った檜垣さんは真剣な目で私を見た。

「どんな理由があるにしろ、夏音ちゃんを傷つけ、泣かせた天倉さんが俺は許せねえ。
少しくらい痛い目見せてやりたい」

「檜垣さん……」

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