溺愛社長の2度目の恋
こんなにも彼は私を想ってくれている。
それは嬉しかったけれど、それに応えられない私は酷く心苦しかった。

「なんてな。
ま、俺から夏音ちゃんを奪った逆恨みだ」

檜垣さんは笑っているが、さっきのはきっと本心だった。
だからこそ、こんなに胸が苦しくなる。

時間になり、檜垣さんと会場に入る。

「本日の主役の登場でーす!」

司会の声で拍手が起こった。
その中を、彼に腕を取られて進んでいく。
さりげなく確認したら、隅のほうに有史さんの姿が見えた。
隣にいる女性に、何事か耳打ちされて笑っている。
それに錐でも刺されたかのように胸が痛んだが、普通の顔を続けた。

会場の中央、開けてある場所に来て足を止める。
私たちがそこに到着すると同時に電気が落ち、スポットライトが当たった。

「夏音」

私の前に跪き、檜垣さんが私の手を取る。

「俺と、結婚してくれ」

指環のケースを開け、彼がそれを差し出してくる。
しかし、そこに入っているのは以前もらったものと違っていた。

「え……」

「これを受け取ってくれたら、今度はなにがあっても絶対に夏音を離さない」

戸惑う私を無視して、さらに檜垣さんが続けてくる。
こんなの、打ち合わせに、ない。
どういうこと?

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