溺愛社長の2度目の恋
この関係が解消されたときにまた必要になるし、トランクルームを借りて預けようかと思っていたが、天倉社長に反対された。

『どれくらいの期間になるか未定だし、賃貸料がもったいないよ。
僕の家を出るときは新しい家具をプレゼントするから、気に入っているの以外、処分しちゃいなよ』

……と、強引に押し切られた。
それで、社会人になって気に入って買ったソファーを残し、あとは処分に回したというわけだ。

引っ越し業者とは別に、タクシーで天倉社長の家に向かう。
出勤二日目に引っ越しその他で出ていくものも多いだろうと、社長がさらに数万円、渡してくれた。

『ごめんね、すっかり忘れていたよ。
足りなかったら請求してねー』
などと社長が笑っていたが、……足りない、とは
もらったお金を見て悩んだのはいうまでもない。
それでもしばらく無給で貯金を切り崩していた身としては、次の給料日まで助かるのでありがたかった。

玄関の前に立ち、つい家を見上げてしまう。

……天倉社長本人がデザインした家、か。

それはそれで勉強のためにも興味がある。

「ようこそ、我が家へ」

インターフォンを押してまもなく、中からドアが開いた。
もちろん、出てきたのは天倉社長だ。

「お、おじゃま、しまーす……」

< 25 / 184 >

この作品をシェア

pagetop