溺愛社長の2度目の恋
「お邪魔しますって、今日からここは夏音の家だよ?」

おかしそうにくすくすと笑われ、頬が熱くなる。

「そ、そうですね……」

とはいえ、私にまだ実感はない。

「この部屋を使ってね」

社長が開けてくれた部屋の中には、すでにひととおり家具が揃っていた。
少しあとに着いた業者の人間が、どんどん荷物を運び入れていく。

「ありがとうございましたー」

「お疲れ様でしたー」

すべてが終わり、業者の人間が帰ると社長とふたりきりになる。

「じゃあ、荷ほどきが終わったら声をかけてね」

「はい、わかりました」

ドアが閉まってひとりになり、なぜかほっと息をついた。

さほど荷物は多くないので、さっさと終わらせてしまう。
パソコンの設定は……あとでいいか。

「おわりましたー」

「そう
早かったね。
じゃあ、こっちに来て」

奥のドアから天倉社長が顔を出し、そちらへ向かう。
中はLDKになっていた。

「今から揚げるから、座って待っててもらえるかな?」

「あっ、はい」

目でダイニングの椅子を指され、そこに腰を下ろす。
すぐに奥に見えるキッチンで、バチバチとなにかが上がる音がしだした。
それに、出汁のいい匂いもする。

「はい、おまたせー」

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