溺愛社長の2度目の恋
向かい合って彼が座り、一緒に食事をする。

「お供えって毎食、しないといけないんですか
あ、いえ、うちには仏壇がなかったので」

「朝に供えればいいだけだし、ご飯だけでいいんだけどね。
僕は深里と同じものを食べたいから家で食べるときは毎食、同じものを供えてる。
それだと本当はダメな食材も使っちゃうんだけど、僕の奥さんは懐の広い人間だったからね。
きっと気にしないよ」

奥様と今でも一緒に食事をしたいからって、尊すぎる
ブラボー
……と、心の中でだけ叫んでおいた。
へらっと締まらない顔で笑う社長は本当に幸せそうで、それだけ今でも奥様を思っているのだと感じさせた。

「そうそう、食事だけどさ」

「はい」

一度箸を置き、天倉社長が私を見る。

「今日みたいなのは特別。
基本、好きなときに自分で作るってことで、いい?」

つい、食べているどんぶりの中を見てしまう。
天倉社長の作ってくれた蕎麦も、天ぷらも、かなり美味しかった。

「はい、わかりました」

このレベルの手料理がもう食べられないのは惜しいが、これは偽装結婚であって本当の夫婦ではないのだ。
ならば、仕方ない。

「作るのが面倒臭いとかなら、外食代はもちろん渡す。
ハウスキーパーさんとの契約を変えて作り置きしてもらってもいい。
どうする?」
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