溺愛社長の2度目の恋
「あー……」

社長の提案は魅力的だが、そこまで甘えるのは悪い。
それに、料理ができないわけではないのだ。

「大丈夫、です」

「そう、わかった」

場所が変わっただけで、今までどおりの生活を続ければいいだけ、だ。

片付けはすると言ったが、食洗機があるからと断られた。
手持ち無沙汰になってリビングのソファーに座る。
アイボリーの革製ソファーは驚くほどに座り心地がいい。
窓の外には燦々と日が注ぎ、よく手入れされた洋風の庭が広がっていた。

「どうぞ」

「ありがとうございます」

差し出されたカップを受け取る。
すぐに天倉社長も隣に座ってきた。

「特にこれをしちゃダメとかないけど、ひとつだけ。
夏音の隣の部屋は立ち入り禁止だよ。
あそこは深里の部屋だからね」

私の隣の部屋とは、この家で一番日当たりのいい部屋だった。
それだけ社長は奥様を、大事にしていたのだろう。

「はい、わかりました」

私に彼らの関係を邪魔するつもりなんてない。
それどころかその尊い愛を守るために結婚を決めたのだ。

「あと、これ」

どこからともなく取り出した紙を、天倉社長が目の前に広げる。

「サインをお願いできるかな?」

「……ハイ?」

それを見て、文字通り目が点になった。
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