溺愛社長の2度目の恋
想い出しているのか、眼鏡の奥で天倉社長の目が懐かしそうに細められる。
きっと奥様のそういうところに、彼は惚れていたのだろう。
なんとなく、そんな彼にほっこりした。

「でもこれは僕の都合で夏音を引っ越しさせて、必要になったんだからね。
黙って買ってもらっておきなさい」

笑っている天倉社長は、とても楽しそうだ。
それに頑なに断り続けるのも反対に失礼だ。

「わかりました、ありがとうございます」

「うん」

彼が頷く。
本当に社長はいい人だ。

役場で婚姻届を提出する。
入社時に戸籍謄本が必要と言われどうしてかと思っていたが、このためだったらしい。

「さて。
次に行くよー」

天倉社長に促されて役場を出た。
これで彼と夫婦になったというのに、なんの感情もない。
やっぱり、偽装結婚だからなのかな。

次に連れてこられたのは、――宝飾店だった。
入ってすぐに天倉社長と同じくらいの年の男性がやってくる。

「天倉様、お待ちしておりました」

「うん、よろしく頼むよ」

そのまま、個室へと案内され、紅茶が出される。
もしかして今のって、支配人とかだったんだろうか。
さすが、セレブは違う。
それにしても宝飾店に一体なんの用が?

「あの……」

「結婚指環、買わなきゃだろ?」

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