溺愛社長の2度目の恋
いたずらっぽく彼が、私に向かって片目をつぶってみせる。
結婚したのに指環がなければ怪しまれやすいのはわかる。
でも、天倉社長は……。

「いいんですか
その、天倉社長は深里さんとの結婚……」

さりげなく彼の左手を見て、言葉が途切れた。
そこには昨日まで嵌まっていた深里さんとの結婚指環がない。

「ん
それならここにあるよ」

思わず彼の顔を見上げたら、目のあった彼はシャツの下からチェーンに通った指環を見せてくれた。

「こうやって深里とは常に一緒だからね。
偽装の指環くらいきっと、許してくれるよ」

指環に口付けし、またシャツの下へと彼が大事そうに戻す。
それに、キュンとした。
こんなに奥様を想っているなんて、素敵すぎる……!

「本日はご結婚指環をお求めと聞いておりますが、それでよろしいでしょうか」

少しして先ほどの男性が私たちの前に座った。

「うん、さきほど婚姻届を出してきてね」

証明するかのように天倉社長が私の腰を抱き寄せる。
それに思わず悲鳴が出そうになったが、かろうじて耐えた。

「それはおめでとうございます。
では」

すぐにペアのリング――結婚指環が目の前に並べられる。

「夏音の好きなのを選んでいいよ」

「いいんですか?」

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