溺愛社長の2度目の恋
「でも、軽自動車はダメだよ。
深里にも同じこと言ったけど、外装が薄くて事故に遭ったときが心配だからね。
大きな車にしろとはいわないから、できれば外車がいいかな」

「……わかりました」

私の安全を思い言ってくれているなら、反対はできない。
ましてや、スポンサーは彼なのだ。

「でも、サイズは奥様の車と同じくらいのがいいです」

「わかった。
じゃあ……」

社長は店員に言い、コンパクトカーサイズの車を案内してもらった。

その日で車は決まらず、夕食を食べて帰る。

「それにしても夏音は本当に、深里と同じことを言うね」

帰りの車の中、おかしそうにくつくつと天倉社長が笑う。

「えっ、と……」

奥様のことを想い出させてつらい思いをさせているんじゃないかと申し訳なくなったが、彼は楽しそうだ。

「こんなに深里と一緒にいるような気分になれたのは、ひさしぶりだよ。
ありがとう」

「あ、いえ
別に私は!」

さらにお礼まで言われ、慌ててしまう。

「偽装結婚だけど、妻に夏音を選んでよかったって思ってる」

ふっと笑みが消え、真剣なまなざしで彼は前を見て運転している。

「夏音は僕が深里の話をしても嫌がったり、止めたりしない。
それに考え方も深里に似ていて、素敵な女性だ。
まあ、僕の深里はセクハラ上司に怒って、胸ぐら掴んで啖呵を切ったりしないけどね」
< 36 / 184 >

この作品をシェア

pagetop