溺愛社長の2度目の恋
思い出しているのか、社長がくすっと小さく笑い、頬が熱くなった。

「……その話は黒歴史として葬り去りたいので、忘れていただくとありがたいです」

あれは自分でも、今となってはやり過ぎだったなという自覚がある。
いや、だからといって今からあそこに戻っても、やはり同じ行動を取るだろうけれど。

「どうしてだい?
僕に深里がいなければ惚れるくらい格好いいのに。
ああ、その場に僕がいなかったのが残念だ」

本当に残念そうに彼がため息をつく。
それが酷く嬉しかった。

帰ってきて社長が深里さんに挨拶をしたあと、並んでリビングのソファーに座る。

「夏音、手を出して」

ケースから指環を出し、天倉社長が私に微笑みかける。
どういう意味かはわかったが、素直に手を出せるわけがない。

「あ、いや。
自分で嵌めますので……」

「ダーメ。
僕が嵌めてあげる」

促すように、ここにのせろと左手を揺らされ、しぶしぶその上に自分の左手をのせた。

「仮初めの結婚とはいえ夏音は初婚なのに、結婚式は挙げないからね。
少しくらいそれっぽいことをしないと申し訳ないよ」

彼の手が、私に左手薬指に指環を嵌める。

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