溺愛社長の2度目の恋
事実、仕事や一般生活ではサバサバどころか若干がさつな私だが、恋に関してはいまだにウブなのだ。

「……反対に聞きますけど、天倉社長は深里さん以外とあんなに簡単にキスできるんですか?」

ごく自然な感じで、軽く唇を重ねられた。
今でも奥様を愛しているなんて嘘
そんな疑問が湧いてくる。

「……簡単なわけないだろ」

彼の声には静かな怒りが含まれていて、びくりと身体が反応した。

「ああ、ごめん」

私が怯えていると気づいたのか、安心させるように社長が微笑みかける。

「僕だって深里以外の人間とキスするのなんて嫌だよ。
でも、周りを騙すためにはしなければならない。
だから本当にできるか、試してみたんだけど……」

そこで彼は言いにくそうに、目を伏せた。

「僕はできたけど、夏音には無理だったね」

再び顔を上げた社長は、残念そうだ。
それを見て、自分が情けなくなった。
処女の私が彼の妻役を演じるなんて無理があると、自分でもわかっていたじゃないか。
それでも彼の尊い純愛を守るんだと決めたのも私だ。
だったらこれくらい、受け入れなければ。

「籍を入れる前に確認するべきだったね。
申し訳ない。
早々にこの関係は破棄……」

「待ってください!」

「え?」

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