溺愛社長の2度目の恋
背が高く、長い黒髪をひとつ結びにして白シャツと黒パンツで済ませている、女っ気のない私とは違い、佳子はちょっぴりぽっちゃりしているものの、緩くパーマがかかった茶髪がよく似合う、女の私から見ても可愛い子だ。

「……ありがとうございます、先輩」

私の励ましでようやく、佳子はわずかにだけれど笑ってくれた。

「でも私、会社、辞めようと思ってるんです」

「なんで!?」

「もう、耐えられません……」

涙で濡れた目で、申し訳なさそうに彼女が俯く。
佳子の気持ちはよくわかった。
きっと、部内の誰もがいつ辞めようかと考えている。
上に現状を訴えなかったわけじゃない。
しかし、役員が親族で固められているような会社では、身内への不満は聞いてもらえないどころか、暗にクビをほのめかされて終わった。
でも、このままでは佳子をはじめ、育ってきた若手が潰される。
もう、我慢している場合ではない。

「わかった、私がなんとかする」

「なんとかするって、なにする気ですか!?」

資料室を出て足早に歩く私を、佳子が追ってくる。
かまわずに勢いよく歩き、部署に戻って部長の前に立った。

「部長!」

「……なんだ?」

パソコンを操作していた手を止め、彼が怪訝そうに私を見上げる。
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