溺愛社長の2度目の恋
私から言葉を遮られ、天倉社長は驚いたように顔を上げた。

「慣れてみせます!
慣れてみせますから、このままお願いします!」

ソファーから下りないだけで、半ば土下座するように頭を下げる。

「こんな無理、しなくていいんだよ?」

私の勢いに面食らっている彼は、私を心配してくれていた。
それがさらに、私の闘志に火をつける。

「大丈夫です。
上司のセクハラにだって耐えてきたんです。
これだって耐えられます」

そうだ、あのパワハラオヤジのセクハラにだって耐えてきたじゃないか。
それに比べたら天倉社長のほうが何倍もイケオジで清潔感もあるからマシだ。
いや、私が恋に奥手なウブ子だからあれなだけで、多少の好意がある女子なら彼にキスされたら喜ぶのでは?

「……セクハラ上司」

その例えは嫌だったのか、天倉社長は複雑そうだ。

「だから、大丈夫ですから、このままこの関係を続けさせてください。
それにいきなり離婚とか、怪しさ満載で会社に居づらくなります」

彼がまた、ため息を落とす。
呆れられている
それとも面倒臭い
それでも私には、引き下がる気はなかった。

「……わかったよ」

少しして気持ちが決まったのか、社長が頭を上げる。

「じゃあ、偽装結婚はこのまま続行。
僕も助かるしね」

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