溺愛社長の2度目の恋
それを聞いて彼がさらに、絶望的な顔になる。

「早朝出勤分はちゃんと、時間外手当は付いていたんだろうね?」

「え?
早朝出勤は残業ではないので付かないですよ?」

私が首を傾げ、有史さんはとうとう頭を抱えてしまった。

「……それはブラック企業っていうんだよ」

そうなんだろうか。
確かに、パワハラセクハラ上司は最低だったが、あとは別に気にしたことがなかった。

「もうこれからはそんな無理な働き方はしなくていいからね。
しばらくは仕事量が物足りないかもしれないけど、慣れて。
うちはゆとりのある仕事で、質の高いデザインをモットーにしているからね」

「はぁ……」

これでいいと言われても不安なのは、私があの会社に飼い慣らされていたからだろうか。
しかし、ゆとりのある仕事で質の高いデザインは納得だ。
前の会社では締め切りに追われ、納得できないまま終わらせてしまった仕事がいくつもある。
あれらはずっと、心残りだった。

「そんなわけで。
とりあえず僕とおやつを買いに行こうか?」

「ハイ?」

不思議そうな私を促し、有史さんがソファーから立ち上がる。
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