溺愛社長の2度目の恋
磯田(いそだ)くんから忙しくて糖分補給しないと頭が回らない! って訴えられてね。
近所のケーキ屋に買いに行くついでにちょっと散歩。
付き合ってくれるだろ?」

「え、えーっと……」

有史さんは行こうと私の手を引っ張ってくるが、いいんだろうか。

「あの。
仕事中に散歩とかいいんですか?」

「ん?
うちのスタッフは気分転換によく行くよー。
黙っていなくなられると困るけど、声かけてもらえたら全然OK」

渋々ながら有史さんと一緒に会社を出る。
仕事中に散歩が許されるなんて、どれだけ緩い会社なんだ。
それとも、前の会社が異常だっただけ?
それに、スタッフから言われたからって、おやつのケーキを社長自ら買いに行くとか信じられない。
前に聞いたときは嘘だと思っていた。

近所の公園を軽く一周し、ケーキ屋で人数分のケーキを買って帰る。
この量だと有史さんひとりじゃ持てないだろうし、私は荷物持ちに必要だったのかも。

「これで仕事が捗ります!」

社長にケーキを買ってこいと遠回しに命じた磯田さんは、大喜びでケーキを食べている。
他のみんなも、もちろん。

「ほら、夏音も」

「あ、ありがとうございます」

受け取ったケーキを私も食べる。
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