溺愛社長の2度目の恋
「夏音、紹介するね。
cadeau de Dieuのオーナーで僕の後輩の檜垣だ」

「よろしく」

にかっと白い歯を見せて檜垣さんが笑う。
浅黒い肌でスポーツショートの彼は、いかにもリゾート地の経営者っぽかった。

「檜垣、岸辺(きしべ)の後任の、古海夏美さん。
今回の件は彼女に任せてある」

「古海です!
よろしくお願いします」

檜垣さんに向かって頭を下げる。
結婚して姓は天倉になっているが、仕事上は旧姓を通すことで会社とは折り合いがついていた。

「それで、僕の奥さん」

「ふーん。
……はぁっ!?」

さらりと言われて檜垣さんは流そうとしたようだが、理解するとそういうわけにはいかなかったらしい。
目玉が落ちてしまわないか心配になるほど目を見開き、驚愕の顔で有史さんを凝視している。

「とうとう深里さんを吹っ切ったのかよ!?」

酷い驚きようだが、私も普段から散々深里さんののろけを聞かされているので、それはわかる。

「まさか」

「ならなんで」

「んー、結婚しないための結婚?
ポーズでも誰かと結婚してしまえば、もう母から結婚を勧められなくなるだろ?
それで夏音と、偽装結婚した」

有史さんの答えを聞き、檜垣さんの口からため息が落ちていく。

「……あんた、酷いことやってるって自覚あるのか?」
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