溺愛社長の2度目の恋
「あるよ。
だから夏音にはできる限りのことをするつもり」
有史さんは穏やかに笑っているが、それ以上はなにも言わせない空気を発していた。
「それに無理強いはしてないよ。
夏音も納得済み」
黙ってうんうんと頷く。
それで檜垣さんは気が抜けたみたいだった。
「だったら、いいけどさ」
ようやく笑った彼は、完全に呆れているようだったけれど。
整地が済んだだけの土地を見ながら、タブレット片手に打ち合わせをする。
「天使と天国ってお話だったんですが、それだとゴシックアンティークなイメージなんですが……」
ピックアップしておいた、該当する教会などの画像を檜垣さんに見せていく。
「んー、こういうゴテゴテしたのは違うんだよな」
それらを見て、彼は渋ーい顔だ。
カジュアルフレンチと聞いていたし、リゾート地レストレランとしては違うだろうなという私の勘は当たっていたようだ。
「もっとこう、……ふわふわ?」
「ふわふわ?」
出てこない言葉をどうにかしようと、檜垣さんは手でもやもやと形を作っている。
「店の名前、フランス語で『神様の贈り物』って意味なんだ。
だから、天倉さんにもっと具体的なイメージを出せって言われて、天使と天国って言ったんだけど……」