溺愛社長の2度目の恋
よく考えなくても有史さんって、私より一回り年上なんだよね……。

「それでさっきからなにを、真剣に読んでるんだい?」

興味深そうに有史さんが画面をのぞき込んできて、つい隠していた。

「ええっと、恋愛小説ですよ、恋愛小説」

まさか御曹司や社長から溺愛される、激甘恋愛モノを読んでいるなんて言えない。

「面白い?」

ずいっと、有史さんの顔が迫ってきて、背中がのけぞった。

「お、面白い、……です」

「ふぅん。
面白いんだ」

なぜか愉しそうに有史さんは私から離れた。

「そろそろお風呂に入っておいでよ」

「そうですね、じゃあお先に」

勧められて、先に入らせてもらう。
髪と身体を洗い、まったりと湯船に浸かりながらふと気づいた。

「有史さんもTLヒーローの素質があるのか……」

大会社の御曹司で、イケメン。
それにおじさんヒーローだって少数ながらいる。
完全に条件は当てはまっているが、彼の溺愛は深里さん限定なのだ。

「あがりました……」

「ん、僕も入ってこようかな」

脱衣所から出てきた私を見て、有史さんは見ていたタブレットをテーブルに伏せた。

「どうぞ」

今度は彼が脱衣所へと消えていき、私は冷蔵庫からスパークリングウォーターの瓶を掴んでソファーに座った。

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