溺愛社長の2度目の恋
「……あつ」

火照った身体に冷たいスパークリングウォーターが染みる。
私は携帯を掴み、先ほどの続きから読み始めた。
物語の中では少しヒーローに気を許し始めたヒロインが、初めてのお泊まりで迫られていた。

「あがったよー」

「あっ、はい!」

有史さんの声で、一気に現実に戻る。
それほどまでに集中して読んでいた。

「長風呂しちゃったよ」

先ほどの私と同じようにスパークリングウォーターの瓶を掴み、彼が隣に座る。

「ここのお風呂、広くてつい、長風呂しちゃいますよね」

「だよね。
いっそうちのお風呂も、ここと同じにリフォームしちゃおうかな?」

有史さんは真剣に悩んでいて、笑ってしまった。

「そろそろ寝ようか」

「……そ、そう、です、……ね」

返事をしながらもつい、しどろもどろになる。
寝るとは、あのベッドに一緒というわけで。

「……私はソファーで寝るので……」

「そんなの、風邪を引くに決まってるだろ?
ダーメ」

回避しようとしたのに強引に手を引かれ、寝室に連れていかれた。

それでも素直にベッドには入れず、足下に座る。
しかし。

「夏音」

有史さんから肩を押され、いとも簡単にベッドの上に転がってしまった。

「今日は檜垣と話が弾んで、楽しそうだったね」

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