溺愛社長の2度目の恋
……きた。

避けて通れない問題だというのはわかっている。
それでも、姿勢を正していた。

「前の会社では、部長のセクハラとパワハラが酷くて……」

女子社員へのボディタッチや容姿いじり、意味のないダメ出しなど、実際にあったことを話した。
改めて今時、こんなことがまかり通るのかと思うが、家族経営で役員のほとんどが高齢となると、昭和の時代から考えがアップデートできないのかもしれない。

「じゃあ、それに耐えかねて?」

両膝の上に肘をつき、前のめりになった天倉社長は、今までの面接官とは違い誠実そうに見えた。

「あ、いえ、そういうわけでは……」

部長の態度には腹を立てていたが、私自身は我慢ができた。
けれど、同僚を、可愛い後輩を泣かせ、潰されるのには耐えられなかった。

「それで後輩の涙を見て、ついキレちゃったんですよね。
女子社員虐めも大概にしろよ、この短足チビがー! ……って」

ちらりと視線を向け、天倉社長の反応をうかがう。
これでいつもと同じならば、幻滅だ。

――しかし、彼の反応は私の予想を遙かに裏切ってきた。

「それで会社、辞めちゃったんだ!」

それまでの姿勢を解いた彼は、わざとらしいくらいに大きな声を上げて笑っている。
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