溺愛社長の2度目の恋
さっき、「人の奥さんをふたりだけの食事に誘うわけがない」とか言っていましたよね?
これは違うんですか?

「な、いいだろ?
いいって言ってよ、夏音ちゃーん」

両の指を組み、泣き落としで拝まれたら断りづらくなる。

「い、いいですよ……」

結局私は、承知してしまった。

憂鬱な気分でお昼休憩までの二十分、仕事をこなす。

……檜垣さんと一緒にお昼なんて、有史さんになんて言い訳したらいいんだろ。

社長室で末石専務に絡んでいる檜垣さんをちらりと見る。
彼は私を待つあいだ、末石専務をからかって遊ぶことにしたらしい。
有史さんと末石専務が大学時代からの仲ならば、檜垣さんも旧知の間柄なのだ。

「夏音ちゃん、お昼行こうぜ」

「えっ、あっ」

そのうちお昼休みになり、社長室から出てきた檜垣さんに引きずるように連れていかれる。
縋るように振り返ると、片手を腰に当て、もう片手で顔を覆った末石専務が大きなため息を落としていた。

「おっ、ここでいいか」

会社を出て、適当に見えてきたカフェに檜垣さんが私を連れて入る。
すぐに席に案内され、彼は私の前にメニューを開いた。

「なんにする?」

「そうですね……」

ここまで来てぐだぐだするのもよくない。
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