溺愛社長の2度目の恋
ガラス向こうのオフィスにまで聞こえるのか、おかげで通りかかった人がぎょっとした顔で中をのぞき込んだ。

「最高だね、君」

眼鏡を浮かせ、笑いすぎて出すぎた涙を天倉社長は人差し指の背で拭っている。

「……どうも」

そこまで大笑いされて、さすがにいい気はしない。

「あー、うん。
僕としては気に入ったんだけど、さすがに社長の一存では決められないからね。
他の人間とも相談してみるから、返事はちょっと待ってくれるかな」

ようやく治まったのか、社長はソファーに座り直した。

「はい、よろしくお願いいたします」

「うん、二、三日中には連絡するから」

今日の今日で返事ができないのはわかっている。
でも、いつもと違っていい感触で期待ができた。

「本日はお時間をいただき、ありがとうございました」

立ち上がった私を天倉社長がドアまで送ってくれる。

「こちらこそ、楽しい時間を……」

思い出しているのか、くつくつとまた彼が笑いだす。
思わず睨んでしまったら、軽く咳払いをして誤魔化された。

「ごめん、ごめん。
君と一緒に仕事ができるのを、楽しみにしてるよ」

柔らかく笑い、彼がドアを開ける。

「こちらこそ、よろしくお願いします」

頭を下げ、会社をあとにする。
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