自己刑罰
 棚橋君は怯えて青くなり、杉原君は怒りのままに、脇田君の手首を握っていた。
「何のつもりだ」
「まさか、いじめか」
 脇田君が一歩も退かず、睨み返していた時。
「やめときなよ」
 猫撫で声で、愛美が止めた。
 佳耶が行かせたのかも知れない。

「ねえ。脇田君」
 甘えるように脇田君の肩に触れた。
 だけど、脇田君は無視しているようだった。元々愛美のことなど、視界にも入っていないのか。
 愛美が鼻白んだ。
 
 佳耶をこっそり見ると、嫌な顔をしていたから、多分、愛美が好きでやっているんだろう。

 まあ、愛美のお陰だったか、どうかはともかく。
その場は、杉原君が退いたようだった。
 脇田君の手を叩き落とすように手を離し、他の仲間達を連れて出て行った。

 棚橋君は、と言えば、
謝るように脇田君のそっと手を解いて、
杉原君達の後を追い掛けた。

 私の思っている通りなら、
きっと、パシリじゃ済まない目に会う。
 それでも、私と同じで、付いて行くしかないんだ。



 置いていかれたような脇田君は、
更に媚を売ってくる愛美を強くあしらって、
教室を飛び出して行った。
まさか、追いかけては居ないと思う。

 その様子を、
ぼんやりと見ていた私に気付いたのか、
 被っている猫を取った愛美が、
通り過ぎる時に、私の机を思いっきり蹴飛ばしていった。


 私がビクッとする様子をみて、どうにか溜飲を下げたようだ。
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