誰にも言えない秘密の恋をしました (君にこの唄を捧ぐ)
蓮は袋からナゲットを取り出して食べ始めるから、
「蓮さん、ハンバーガーも食べて下さい。チーズバーガーとアボガドバーガーどっちが良いですか?」
チーズバーガーを指さすから、心菜はどうぞと渡してホッと安心する。
なのに、
「心菜、口開けて、あーん。」
突然、心菜の顔の前にバーガーを差し出してくる。
「えっ⁉︎」
「早く、ソースが垂れる。」
慌てさせられて、心菜は思わずパクッと目の前のハンバーガーをかじる。
「うーん、美味しいです。
チーズがトロトロで、パテがジューシー。蓮さんも食べてみて下さい。」
蓮はやっと満足したのかバーガーを食べ始める。
食べかけで良いのかと心菜は若干心配になるが、蓮はまったく気にしていないようなので、心菜も持ってる照り焼きバーガーをまた食べ始める。
この味はなかなか真似できない。
なんて名前のお店だったのかな?材料は何を使っているのかな?と、心菜は袋に書かれた材料を熱心に見つめ読もうとするけど、
夕日が沈み辺りが段々と暗くなってきた為、よく見えない。
そんな心菜を見つめて微笑みながら、
「心菜は甘い物だけじゃ無くて、食べ物なら何でも興味があるんだな。」
「そんな、食いしんぼうでは無いです…。」
何だか今までもいろいろ見られていたのかもと思うと、途端に恥ずかしくなる。
「心菜のおかげで俺も食に興味が湧いた。
入院中に差し入れてくれたプリンとか、コンビニで勧められた肉まんとか、最近よく食べる。」
「そうなんですか?
少しは私も蓮さんのお役に立てたなら嬉しいです。」
心菜が嬉しそうにそう言う。
「次の休みはいつ?
食べに行きたい場所とかあったら連れて行く。」
心菜は首を横に振って慌てて断る。
「蓮さんの大切な休日を私が独り占めする訳にはいけません。」
「俺は出来るだけ心菜と一緒にいたいんだが、心菜は違うのか?」
そう言う蓮さんが寂しそうに見えるから困ってしまう。
「私は蓮さんにゆっくり休んで欲しいんです…。あっ、じゃあ、良かったらお夕飯作りに行っても良いですか?
お口に合うか分かりませんが…。」
心菜としては思い切った事を言ってしまったと急に恥ずかしくなって、
「今のは忘れて下さい…。」
と、小声で訂正してバーガーを食べるのに集中する。
蓮はそんな心菜の口元に付いたソースを指で拭い取り、その指をペロリと舐める。
「美味いな。」
その一連の流れを心菜は驚き、目をパチパチと瞬く。
「…た、食べますか?」
手の中のバーガーをそっと蓮に差し出すと、
パクッと一口食べるから、
鼓動が忙しなくドキドキと高鳴り顔が火照り真っ赤になる。
街灯が薄暗くて、あまり見えなくて良かったとホッとした。
「飯、作りに来てくれるのか?」
また振り出しに戻ってそう蓮が言ってくる。
「大した物は作れませんよ?
一般的なものしか作れないので、蓮さんに喜んでもらえるか分からないです。」
「心菜が作ってくれたのなら、何だって嬉しいに決まってるだろ。」
後でお互いのスケジュールを送り合う事になった。
蓮さんの役には立ちたいけれど、ここまでプライベートに入り込んでも許されるのだろうか?
なんせ彼は芸能人なのだから…心菜の中ではまだ戸惑いが拭い切れない。