誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
少しベンチで休み、再び車に乗り込む。

「後、1時間くらいかかるから心菜は寝て。」
そう言って、助手席の椅子を少し寝かせてくれるから、

「全然眠く無いですよ。蓮さんが運転してるのに1人寝る訳には…。」

不意に、キスされて言葉を遮られる。

私はびっくりして瞬きを繰り返すばかりで、

「俺は心菜が寝不足でふらふらしてたのを見てるんだ。明日早番なんだろ?心配だから。」
そう言って、またキスが降り注ぎ、深いものに変わる。

そういうキスに慣れてない私は翻弄されて、
頭がボーっとなってきてしまう…

抗いたいのに蓮さんの思うまま。

最後に額にキスされて、
「おやすみ。」
と、言われシートベルトを付けてくれた。

車を走らせながら、歌まで歌ってくれる。
極上の子守唄を聴きながら、
頭がほわんとなってくる……

これは無理…誰だって眠くなる…。

「…おやすみ…なさい。」
と言うのが精一杯で、私は意識を手放した。



次に目覚めた時は自宅アパートの駐車場で、
目の前には蓮さんの笑顔…。

びっくりして飛び起きて、思わず頭を打ちそうになる。
寸でのところで、蓮さんが手を出して守ってくれた。

「ご、ごめんなさい。」

ハハっと可笑しそうに蓮さんが笑う。

「寝起きが良すぎてこっちが驚く。」
そう言われるがそれどころじゃ無い。

蓮さんの大切なピアノを弾く手が心配で、
「手、大丈夫でしたか?ぶつけちゃいました?」
手を掴んで赤くなっていないかよく確かめる。

「大丈夫だ、痛く無いから。
それより、もう11時半だ。
心菜が良く寝てたから起こすのに忍びなくて、寝顔見てたら俺も一緒に寝てた。早く帰って寝た方がいい。」

そう言って、わざわざ降りて助手席のドアを開けてくれる。

「部屋まで連れて行ってあげたいけど、帰りたくなくなるといけないから、ここで見送る。」

そう言う蓮さんの言葉の意図が分からなくて、つい見つめてしまう。

「その顔、1番困るんだけど…。」
おもむろに抱きしめられて、ドキッとする。

「暇な時でいいから、心菜の予定メールして。少しでも会いたいから。」

頭を撫でられ軽いキスを頬にされる。

「はい…。」
夢うつつの私はちゃんと話す事が出来なくて…

「これ、残ったハンバーガー明日の朝にでも食べな。」
紙袋を渡されて、ぼぉーっとしている私の向きをくるりと回して背中を押してくれる。

「あ…あの、今日は楽しかったです。
ありがとうございました…おやすみなさい。」
我に返った頭でそう伝えて、ぺこりと頭を下げる。

あっダメだ泣きそう…
そう思って慌てて、蓮さんと目を合わせないようにくるりと向きを変えてアパートに向かう。
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