誰にも言えない秘密の恋をしました (君にこの唄を捧ぐ)
トントントン
ガラガラガラ…
「蓮さん…良かったです。
救急車で運ばれた時はどうなる事かと…
意識が戻って本当に良かった…。」
マネージャーの森元圭吾がやっと来た。
「死んだかと思ったか?」
辛辣な物言いになるが本心だ。
コイツは俺の心配よりも、きっとこの先のコンサートの中止や、半年以上に渡るびっしり埋まっていたスケジュールをどう対処すべきかで、頭がいっぱいの筈だ。
「今、担当医から説明を頂きましたが、
今後の退院に向けてのスケジュールですが、手足の骨折の手術は来週あります。
頭の方は1ヶ月程度の安静が必要ですが、1週間ほど様子を見て何事もなければ日常生活に戻れるようです。
大変なのは手術後のリハビリですが、あなたなら最短で回復出来ると思いますから…。」
「お前の頭の中はスケジュールでいっぱいだな。」
機械に囲まれて寝てる俺に、よくもまぁそんなにポンポン先の事が言えるな。と、怒りを通り越して呆れる。
「蓮さんだったら大丈夫です。」
まだ言うか森元…。
どこまで社長の犬なんだか。
俺の周りには自分の事しか考えていないやつらばかりだ。
「既に社には沢山のファンからの差し入れが届いてます。コンサートが延期になっても、心配しないで下さい。復活次第取り戻す事が出来ますから。」
ふぅーと深いため息を吐く。
俺もコイツらの駒の一つにしか過ぎない。
何処に逃げても支配されて、良いように使われて、要らなくなったらポイされる。
今はまだ、俺は使えると踏んだだけだろう。