誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)

蓮の気持ち

近付けたような気持ちでいたのに、まだまだ心菜の心は遠い。

分かってるつもりだった。

彼女は若い、全てはこれからだ。

恋も仕事も夢も始まったばかりだ…
やりたい事、なりたい自分、夢に向かって突き進んでいる最中だ。

希望に満ち溢れ、輝いている彼女は綺麗だ。

きっと、俺なんかよりもっと楽に、周りからも祝福されるような恋愛が出来たはず。

例えば…
職場で出会って、悩みを聞いて慰めて励ましてもらえるような…そんな男の方が幸せなんじゃないだろうか。

そう思うと、彼女の自由を俺が奪っているのかもしれない。

だけど、今更手離せやしない。

出来れば彼女の全てを知る男は俺だけでいたい。最初で最後の男でありたいと思ってしまう。

シャワーを浴びながら、
俺は仄暗い気持ちを深くに沈めてひた隠す。

愛しているだけでは駄目なんだと…

側にいたいだけではいけないんだと思い始める。

俺が有名人じゃ無かったら、普通の会社員だったなら、もっと彼女の心を簡単に手に入れられたのだろうか?

モヤモヤとしたこの気持ちを振り払うように、冷たい水を浴び身支度を整える。
< 146 / 287 >

この作品をシェア

pagetop