誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
「あー、その事だけど。心菜に言いそびれてたんだけど、別れたんだ。」

えっ!?
別れたって…5年も付き合ってて、いつ結婚するんだろうって…おじいちゃんも楽しみにしてたのに…。

心菜は思わず足を止めて驚く。

「何で?いつ別れたの!?
あんなに仲よかったのに!!」

まぁまぁ。と、兄は心菜の背を撫ぜて落ち着かせる。

「夏辺りにな…。ちょっと揉めて、結局別れた。結婚に煮え切らなかった俺がいけないんだ。こればっかりは仕方ない。」

「何で?何でもっと早く教えてくれなかったの?」

「だって心菜心配するだろ?
仕事始めたばかりの心菜に余計な負担はかけたく無かったし…。まぁ、あれだ。
兄ちゃんはしばらく仕事に生きるから、来年には係長も夢じゃ無いぞ。」

はたから見ても、から元気を振り撒く兄は痛々しい。

「この前実家に帰った時、おじいちゃん何も教えてくれなかった。」

「じいちゃんにも心配かけたく無くて言って無かったからな。」

「何で…兄妹なのに…。」

両親のいない2人だけの兄妹だ。
今までずっと助け合って支え合って生きて来たのに、兄の一大事をまったく知らなかった自分が嫌になってくる。

「もう、別れて3ヶ月だ。吹っ切れたし心機一転頑張るから、兄ちゃんの事は心配するな。」

そんな話しをしていると、いつの間にかゲートを通る順番になり慌ててチケットを2枚出す。
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